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2010年2月14日 (日)

宮沢賢治「水仙月の四日」最終話

雪婆んご(ゆきばんご)が いいました。
「もう、休んでいいよ。
今年の水仙月も まぁ いいあんばいだったね。
うまく 済んだよ」
そして、口をびくびくさせて笑うと、東の空へ かけてゆきました。
雪童子(ゆきわらす)たちは、ほっとして むちを ふるのをやめました。
すると、あたりも 安らかになって いちめんに積もった真新しい雪が
青白く光りました。
空は みるみる晴れて 星たちがままたきはじめました。
雪童子のひとりが いいました。
「さっき、男の子が ひとり死んだね」
「だいじょうぶ。眠っているんだ。朝、ぼくが起こしてやるさ」
「そうかい。。。まぁ、いいだろう。じゃあ、先に帰るよ」
そして、めいめいの雪狼(ゆきおいの)を連れて、
北の空へ、かけてゆきました。
5
まもなく 東の空が 明るくなりました。
「夜が明けたね。あの子を起こさなくちゃあいけない。
ぼくに ついておいで」
雪童子は、雪狼にそういうと、男の子の埋まっているところへ
急ぎました。
「さあ、ここいらの雪を けちらしておくれ」
雪狼が たちまち 雪をけたてました。風が それを とばしました。
赤い毛布(けっと)のはじが、ちらりと見えた そのときです。
遠くで何か 叫ぶ声が 聞こえました。
雪童子は、雪の丘をかけあがります。
毛皮を着た 男の人が 一生懸命 叫んでいるのが 見えました。
男の子の名前を 呼んでいるにちがいありません。
「お父さんが来たよ!もう 目をおさまし!」
雪童子は叫んでふりかえると、赤い毛布が ゆれて
雪が はらはらと こぼれました。
雪童子は、むちをふるって、雪けむりをたてました。
すると、毛皮をきた人は、はっとして
向きをかえて、こちらへ走ってきました。
雪童子はくすりと笑うと、北の空へ かけあがってゆきました。

もうすぐ、この北の里にも 春がやってきます。
6

(おしまい)

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コメント

お話としては、とってもささいな出来事なのに、
雪をさまざまな人物に変化させて、
丁寧に描写する。
とっても、おもしろかったですhappy01

宮沢賢治のお話の世界は、私の中で
なぜかモノクロのイメージが固定されていましたが、
同じ雪国の空も、青だったり茶色だったりと、
あ~やっぱり、色はあるんだわlovelyと、
ぷりんさんのお陰で、重たいイメージを払拭できました。
読後がとても心地良いですconfident
ありがとうございました。

投稿: せりなずな | 2010年2月15日 (月) 09時22分

雪の世界に身を置いている人たちにとって、このお話はどう受け止められたのだろうと思いながら読んでいました。
何もないと思われる白くて凍りつくような世界にも、物語があると想像することで、自分たちの土地、季節、暮らしに奥行きができ、さまざまな事象にも慈愛の心が生まれていったんだと思います。

投稿: アルキメデス | 2010年2月15日 (月) 16時38分

cloverせりなずな様
せりなずなさんに、そう言っていただけると、
とても嬉しいです。happy01
宮沢賢治の再話ははじめてやってみたけど、
むずかしかった。絵で「場」をもたせたかも(笑)
雪童子は、孤独な子ども。。からかうつもりで
投げたやどりぎを、大事にしてくれた男の子に
生まれてはじめて「友情!」らしき感覚をもったのでは
ないか??flair
このへんをテーマにしたかったんですけどね。
宮沢賢治のご意向にそえたかどうか???

さてさて、せりなずなさんのお話についても
ようやく考える余裕ができました。
もうしばらく、お待ちください。confident

投稿: ぷりん | 2010年2月15日 (月) 19時33分

eyeアルキメデス様
このお話は、宮沢賢治の故郷岩手で
よくおこる春先の吹雪のお話らしいです。

アルキメデスさんのおっしゃるとおり、
きっと、「雪の世界snow」の人たちに
思いを馳せて賢治は、書いたのでしょうねぇ。

子どものための童話のなかに
「裏切りbomb」と「慈愛heart01」をはさみこんでくるところが、
賢治の心の叫びを聞くようなところが
ありました。typhoon

投稿: ぷりん | 2010年2月15日 (月) 19時42分

おはようございます。
2枚目の絵の赤い毛糸の男の子ですが、な~んともいい表情ですね。
プラス雪童子の表情も素敵です。
先生は、目を描かれる時は一番最後ですか?

雪の色も空の色も、空の動きも勉強になりますheart04
宮沢賢治shineを読み返してみようと思いました。

投稿: aoba | 2010年2月16日 (火) 10時08分

snailaobaさま
「人形は顔が命~久月」ではないけれど、
絵を描くときも顔は命~♪
下書きの段階から、ここは、練ります。
バックなどは、色をつけながら、
一本の木clubが3本clubclubclubになったりするけど、
表情は変えない。。。
でも、目の仕上げは、さいごかな?eye

宮沢賢治の原文と、読み比べると
筋は変えてませんけど、わかりやすくするため
表現もずいぶん変えてしまいました。happy02

投稿: ぷりん | 2010年2月16日 (火) 20時02分

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