中原中也を描く その1「サーカス」
わたしは 物語に絵をつけるのも好きですが
詩に絵をつけるのも とても好きです。
詩人中原中也は、好きな作家のひとりです。
中也の代表作のひとつに「サーカス」があります。
こちらに絵をさしこみながら、読んでみますね。
読めば、そうそう!となつかしく思い出される方も多いのでは?
幾時代かがありまして
茶色い戦争ありました
この戦争とは、日清日露戦争のことらしいのですが、それを描いても
詩の持ち味が台無しになるので、抽象画ふうにしてみました。
人らしきものを並べて兵隊さんをイメージ!
ぐるぐるした線は「争い」のつもり(笑)
ちらちらした白い円は、ちってゆく魂か(笑)
幾時代かがありまして
冬は疾風吹きました
幾時代かがありまして
今夜はここでひと盛り
今夜はここでひと盛り
「ひと盛り」にかけて「ひとり」をアップ!
どうやら時代は変わったらしい。空気感も変わって、何か感じている
つもりの人物。。(笑)
サーカス小屋は 高い梁(はり)
そこにひとつのブランコだ
見えるともないブランコだ
頭さかさに手を垂れて
汚れ木綿の屋根のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
それを近くの白い灯が
やすいリボンと息をはき
観客様はみな鰯
のどがなります牡蠣殻(かきがら)と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
詩の場面は一転して、サーカス小屋に移ります。
空中ブランコなのにちっともわくわく感を感じません。
何かが。。。ただぶらさがって揺れているばかりに思えます。
それを見ている観客も 鰯のように群れているものの
歓声は聞えず、のどばかり鳴らしているようで、どこかぶきみです。
なんだか、さめたいのにさめない もやもやとした夢の中のようです。
どこか退廃的な中也の内面をのぞいているみたいです。
屋外は真っ暗 闇(くら)の闇(くら)
夜はこうこうと更けまする
落下傘奴(らっかがさめ)のノスタルジアと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
詩の場面は、サーカス小屋から外へ移ります。
暗闇のなかに、三角のテントだけが、ぼおーっと浮かんでいるようです。
時間も空気もただそこで、たゆってばかりで 進みません。
まるで、昔栄えた国が、深海にしずんだあと ひっそり霊になって
ただよっているような印象です。
幻想的な詩だなぁ。。
「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」という旋律が 心にこだまする。
虚無的で哀しいこんな擬音をつぶやいた中原中也。
彼は生来、普通の人とはちがって、えら呼吸しながら、きれいな沼に
棲んでいたのかしら?
(つづく)次回は別の詩と絵で。。。。
こちらは映像で綴る日本の詩歌「中原中也」に収めれれています。
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コメント
ぷりんさんの抽象画はこうして出来上がるのですね。
感覚が言葉になり、歌になり、絵になる。
中也とぷりんさんがサーカスの空中ブランコで
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
とゆっくり揺れあいながら
手と手が触れて、スパーク!
そして創造の花が舞う〜
投稿: アルキメデス | 2010年2月18日 (木) 19時53分
えら呼吸しながら、沼に棲むのは…
山椒魚?鯰?何かしら??
でも、そのイメージ!妙に納得してしまいます。
高校生のころ、教科書に載っていた中也の写真に
変な恋心を抱いたりして
詩を読んで、分かった振りをしてました。
ぷりんさんの抽象画、初めて拝見させていただきました

解説付きで、絵心のない私にも、よ~くわかりました。
頭の中に浮かんだイメージを絵で表現できるって、
本当に素晴らしいことですね!
私は無理でも、子供にやらせてみようかしら
投稿: せりなずな | 2010年2月19日 (金) 18時17分
自分の感覚を研いでくれるものに
「詩」があります。
ことばを音符
あと「能」
うまくいったかどうか?は別にして
楽しいお仕事でした。
投稿: ぷりん | 2010年2月20日 (土) 20時19分
あの教科書の写真。。以外はない?
ほど印象的な写真ですよね。
かわいい!しかも
いかにも繊細そうで。。。
なおとくんも、平成の中也になりそうな。。。
感覚の持ち主!
今はえら呼吸してるのです。
楽しみね!
次の記事を描きたいものの
マックを入れ替えたばかりで、うまく
操作ができなくて 困ってます。
とほほ。。。
投稿: ぷりん | 2010年2月20日 (土) 20時29分
抽象的な表現によって、ますます詩が好きになります。
難しいテーマなのに。最後には豊かな気持ちになります。
いつまでも挑戦あるのみ…と、自分に言い聞かせています。
投稿: いまはしゆうこ | 2010年2月21日 (日) 12時06分
詩人というのは、絵描きより「生来」のものが
必要なような気がします。
言葉はみんなが使うものだけに、
かえって、むずかしいですね。
ですから、わたしは、それをあやつれる人が
うらやましくて、
寄り添ってみたくなるの。
挑戦あるのみ
!か。。。重いわぁ。

いつまで、がんばれるかなぁ。
心もとないです
投稿: ぷりん | 2010年2月22日 (月) 18時49分
こんにちは

深い色合いが、この詩にマッチしていると感じました。
色々な事に挑戦されて自分を高めていらっしゃる。
いつも尊敬の眼差しでブログを拝見しています
投稿: aoba | 2010年2月23日 (火) 11時42分
aobaさんの絵のバックのつけかたなど、
拝見すると、抽象画にも向いていそうだなぁ。
と思っています。
こんど、花らしきもの
だけで、描いてみても、きっとすてきになりますよ
投稿: ぷりん | 2010年2月23日 (火) 13時18分