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2009年11月11日 (水)

「ブレーメンの音楽隊」を読み解く その1

みなさんご存知「ブレーメンの音楽隊」は、グリム童話のひとつです。
このお話を、小澤俊夫先生の「昔話の語法」で(自身の復習がてら)
読み解いてみたいと思います。
(絵はずいぶん前にお仕事で描いたもの。掲載は月刊誌でしたので
もう売っていません。文章はわたしが、ブログ用に新たに書きおこしました

むかし 一頭のろばが 飼われていました。
長い間 荷物を運んできましたが、年をとると
ほとんど 働けなくなってしまいました。
そこで 主人は そろそろ ろばを 殺そうと 思いました。
それに 気がついた ろばは 「こりゃ 大変だ」と
逃げ出して ブレーメンの町へ むかいました。
ブレーメンの町へ行けば、音楽隊に はいれると思ったからです。

しばらく 歩いていくと、犬に 出会いました。
息をはぁはぁきらして 寝そべっています。
ろばが、「おや、犬くん。 どうしたんだね」と 聞くと、
犬は、「ああ、情けない」と言いました。
「わたしは おいぼれてしまって ご主人の 狩りの おともが
できなくなっちまったんだよ。そうしたら、ご主人に撃ち殺されそうに
なったので、逃げ出してきたのさ。
でも、これから どうしたら いいのだろう。」
「それなら、ブレーメンに行こう。町の音楽隊に やとってもらうんだよ。
「そいつは、楽しそうだ」
犬は うれしそうに いっしょに 歩き出しました。
1
二匹が しばらく行くと、猫に 出会いました。
びしょぬれになって、しずんだ顔をしています。
ろばが「おや、猫さん。どうしたのだね」と聞くと、
猫は「ああ、情けない」と 言いました。
「わたしは、おいぼれてしまって、ねずみが 
とれなくなっちまったんだよ。そうしたら、おかみさんに
川にしずめられそうになったんで、逃げ出してきたのさ。
でも、これから どうしたら いいんだろう」
「それなら、ブレーメンへ行こう。町の音楽隊にやとってもらうんだよ」
「それは 愉快ね」
猫は 機嫌をなおして いっしょに 歩き出しました。

三匹が しばらく行くと、おんどりに出会いました。
夜明けでもないのに 大きな声で 鳴いています。
ろばが、「おや、おんどりさん。どうしたんだね」と聞くと、
おんどりは「ああ、情けない」と言いました。
「明日、お客さんが来るんだよ。そうしたら、わたしは
首をちょんぎられて、スープにされるんだよ。
だから、鳴けるうちに 鳴いているのさ」
「それなら。ブレーメンに行こう。町の音楽隊にやとってもらうんだよ。
死ぬよりましだろう。
みんなで 音楽隊をやれば、ちょっとしたものだぜ」
「それは、すてきだ」
おんどりは、良い申し出だと 満足しました。
2

こうして、四匹は 連れ立って。ブレーメンの町を
めざして 歩きだしました。
でも、ブレーメンの町には 一日では たどりつけませんでした。
森に はいると、 夜になりました。
3_2
●昔話とは、もともとは、絵本ではなく、口伝えの文学です。
ですから、とっても、単純!耳で聞き取りやすいように 自然と 語り口が
整えられてながら、伝わってきました。
この語り口の様式美を「昔話の語法」といいます。
●まずは、はじまりのおきて。「むかし、むかし」「今は昔」がはいります。
さあ、はじまるぞ!と、耳をすます、きっかけです。
●昔話は「欠落の文学」です。はじめは、不幸でなくてはいけません。
いじめられたり、 ばかにされたり、ひとりぼっちだったり、子どもを
さずからなかったり、病気だったり、貧乏だったり、しなくてはいけません。
昔話は「不幸から幸福になる文学」なのです。
不幸あってこその、ファンタジーなのです。
●だからといって、「不幸」をなまなましく、表現することはありません。
首がちょんぎられても、血まみれには なりません。
さらっと、いきましょう。これは、幸せになるための 要因です。
●ストーリーの盛り上がりは、ホップ、ステップ、ジャンプのクレシェントです。
この3段階は、同じ調子で語られますが、2回目が少し軽く、3回目が重要で
次の展開に映ります。このお話では、犬、猫、おんどりと仲間をふやして
行きますが、主人公の不幸は1回目、2回目、3回目と、エスカレート!
でも3回目で克服したり、三人兄弟の末っ子が、物語をひっぱることが、
なんと多いことか。「3」はキーワードです。
●昔話の登場人物は、むずかしいことは、考えません。
この場合も「年をとったからといって、どうしてこんな目にあうのか」とか
「そもそも、そうやすやすと、音楽隊にはいれるのか」などとは
決して考えません。まっすぐ、ストーリーだけが、すすんでいきます。

さて。。。四匹は幸せにむかって、まっしぐら!次回をお楽しみに!

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コメント

小澤先生、素晴らしい方ですね。
とても勉強になりました。
今書きかけのお話に、とても役に立ちました。
ありがとうございました。

グリムは、残酷な場面が多いですが、
確かに、血は流れないし、死体が転がることはない。
不幸から幸せへの転換が、はっきりしている。
それが、昔話の大切なポイントですね。

それにしても、
動物がそれぞれ表情豊かで、良いですねsmile
音楽が聞こえてきそうですnotes
でも、やっぱりぷりんさんの夜空と月は、いい!!
赤い空に、まん丸の大きな月。
子供にも読み聞かせますbook

投稿: せりなずな | 2009年11月11日 (水) 14時58分

cloverせりなずなさま
ほんと、どこかで誰かが、おとぎ話を「残酷」に
いじくってしまったので、困っています。crying
なおくんには、きちんと、書いてあるものを
読ませてくださいな。
「残酷」だったり、「陰惨」だったりすれば、
語り継がれてこなかったはずです。
長いこと残ってきたのは、「困難に知恵と勇気」で「幸せ」になる話だったからです。crown
はじめから、みんないい人たちにかこまれた
ようなお話を読んでも、
「つらい気持ちを理解できる」
子どもが育つとは思われません。think
「生き抜く力」も育ちません。punch

投稿: ぷりん | 2009年11月11日 (水) 16時27分

暖色の色使いが、きれいですね〜。
麹町の提示版にぷりんさんのホームページの案内と
見た人の声が乗っていますよ〜。

投稿: アルキメデス | 2009年11月11日 (水) 17時26分

eyeアルキメデスさま
赤い色が大好きなの。
で。。。夜も赤にしてみました!art

麹町、見てきました~!
あんなに点数が悪かったのに
コメントもあった!karaoke
感激です。happy02

投稿: ぷりん | 2009年11月11日 (水) 18時58分

こんばんはhappy01
今日は一日中雨降りでしたねrain

家の愚息は、「むか~し、むかし」や「そのまたむかし」などで始まるお話が大好きでした。

昔話=哲学なんだと、どなたかも云っていましたねpencil

昔話、そして伝統や文化も、子供たちに大切に伝えて行きたいですよねloveletter

「ふらここ」かたお便りを頂きました。
先生はまた参加されますか?birthday

投稿: aoba | 2009年11月11日 (水) 21時25分

cloveraoba様
昔話が哲学!flair
なるほど、そういった見方もできますね。
「人生いろいろ」「ものは考えよう」とかが
おとぎ話の形で、語られています。sunrain
息子さんも、昔話で育ってくれて、
うれしいわ。bud

ふらここのお話はきていませんが、
菊池先生が
おやりになるみたいね。
いい絵をお描きなりますよ。
お話したことある~!happy01

投稿: ぷりん | 2009年11月12日 (木) 07時12分

今回は西洋ものですね!
ぷりんさんの日本物をずっと見てきたので新鮮です。

投稿: AYUMI | 2009年11月13日 (金) 03時01分

artAYUMI様
西洋ものの昔話は、むずかしいです。coldsweats02
時代考証ができない。。。
服装とか物のかたちがよくわからない。
調べ物が大変なのですけど、
これは、動物だったので、ごまかしが
ききました。coldsweats01

投稿: ぷりん | 2009年11月13日 (金) 18時07分

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