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2009年8月 4日 (火)

勝鬨橋たもとの「はしば」

夏の夕刻、築地。隅田川にかかる勝どき橋をわたる。
かつてこの橋は開門。飛び跳ね橋として勇壮な姿を見せてくれた。
そのたもとに「はしば」という和の酒処がある。
つい先日、こちらにおよばれして呑んだ。
というのも、店主の奥様が、わたしが毎月表紙を手がけている
「酒めん肴」という小冊子の担当編集者なのである。
1 酒めん肴8月号
食に関心の深い彼女と店主のなれそめは、なんと
「手作りパンの教室」だったそうな。。。
で、前菜でお目見得したのが、彼女手作りの小さなコーンパン。
レバーペーストがそえてある。
まずはと頼んだ生ビールと一緒にいただくと、
すいたおなかをちょっと落ち着かせてくれて、ほっと嬉しい。
「ビールとパンはお似合い夫婦」。まるで、店主と彼女のようね。
ふふふ。。。などと、心のうちでつぶやいているうち、
お料理は、どんどん進む。
「えだまめの豆乳ごま豆腐」「季節の野菜焼き」「まながつおの柚庵焼き」。。。
どれも品の良い味付けだが、どこか小粋な娘が顔を覗かせているようなお味。

聞けば、店主は「この道20年の鮨職人。でも15年、ニューヨークで修行」
とのこと。和の格式をはずした、自由なふんいきの味の秘密は
このへんにありそうだ。

成功と挫折の縦横の糸で織られているようなニューヨーク。
そんな都会のなかを流れるさまざまな価値観に、店主は身を置いてきたようだ。
されど、流されることがなかったのは、己の核に「和」をきちんとすえていた
からだろう。
そして、その核は「リアリズムに裏打ちされた夢」を育ててきたのかも知れない。

「どうして、ニューヨークではなく、築地でお店をかまえたのでしょう?」
私の問いに 店主は答える。
「魚は はるかに 日本が上物」
「では、なぜ鮨屋ではないのでしょう?」
店主は答える。
「呑む際に 鮨だけでは、ちょっと飽きる。
自分は「創作料理」ではなく、「和の型を変える流れ」をつくってみたい」
覚悟を感じる話しぶりであった。

思えば、歌舞伎も 今は伝統芸といわれる型の世界。されど もとは
庶民階級から生まれたもの。
みんなで楽しめる様式美を作り、時代の応じてその型を工夫してきた。
おそらく店主もそんな思いなのだろう。
2
さいごに江戸前の「づけ」をごちそうになって店をでる。
けっこう呑んだ。おいしかった。楽しかった。
勝どき橋をわたる風に吹かれて、ふらり、一休み。
とうとうとした黒い流れのむこうに高層ビル。
きらきら、きらきら連なっている。
時代は変わったのだ。時代に似合う「美しさ」って何だろう?
「はしば」には、このとび跳ね橋にかわって、跳ねて見得をきっていただきたい。
成功とふたりの幸せを祈って、かちどきをあげよう。

えいえいおう!えいえいおう!

ひとり、大江戸線で帰る。

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酒肴の花」カテゴリの記事

コメント

京都に住んでいると和にあふれています。そういえば結婚してすぐはお茶屋さんに挨拶だった。ぷりんさん、雑誌の表紙もまた素敵・・。

投稿: いまはし ゆうこ | 2009年8月 5日 (水) 06時16分

cherryblossomいまはし先生が京都におすまいなのは、
なんとなく察しておりました。
いいなぁ。京というのは江戸から見ると、
いつのなっても「あこがれ」です。
結婚すると、御茶屋さんに挨拶するのですか。
それもまた、伝統なのね。
また、京都のおばんざいで呑んでみたいわ。smile

投稿: ぷりん | 2009年8月 5日 (水) 14時23分

先生がお一人でお酒を・・・・。
きっとお着物で・・・・・。
そしてたぶんカウンターで・・・・。
ビールのあとは冷酒でしょうか。
熱燗でしょうか。

粋な感じが致します。

ちゃんとお家へたどり着きましたか?

投稿: aoba | 2009年8月 5日 (水) 18時20分

さっそく覗いてみましたよ「はしば」さんのホームページ。
素敵ですね。今度連れてってくださいまし。

あのあたりはいいお店が多いですね。
銀座に近いけど銀座じゃないから良心的ですね。

投稿: 猫の手 | 2009年8月 5日 (水) 18時22分

下戸の私には、縁のない店のようですが、
お酒の美味しいお店は、必ずお料理も美味しいですよねbottle
日本酒なら、ちびちびっといけますが、
子供が母乳でしたから、飲むこともなくなりました。
いつか、ぷりんさんとこんなお店で呑んでみたいなあ…なんて夢見てますconfident

投稿: せりなずな | 2009年8月 5日 (水) 19時22分

お店を拝見しました。美味しそうだね。
誰かと行こうかな。。

夏のある日、勝鬨橋の夕暮れの美しさを体験しました。
うれしくてアルキメデスで、銀座まで。
大汗をかきました。

ぷりんさんを飲ませると面白そう(*^_^*) 

投稿: アルキメデス | 2009年8月 5日 (水) 19時51分

chickaobaさま
着物のおばさんが、ひとり。。
カウンターで呑んでいる。。
しかも、酔っ払いながら、クロッキー帳に
なにやら描いている。。
ほかのお客さんは、どう思っていたかしらん。

地下鉄のなかでは、かくかく。。。
ほかの乗客は、どう思っていたかしらん。
あやうく、乗り越すところでした。
恥の多い人生ですcrying

投稿: ぷりん | 2009年8月 6日 (木) 07時18分

cat猫の手さん
「はしば」はカウンターの奥に小座敷。
恒例すずめ会の会場でもいいかも!
ちなみに店主の名前は「羽柴」!
天下統一か!?happy02

投稿: ぷりん | 2009年8月 6日 (木) 07時23分

cloverせりなずなさま
うちの母も下戸だったはず。。。なのですが、
子供たちが、巣立ってしまったら、
いつのまにか、「いける口」になっていましたhappy02
父や友人たちと、おいしいものを食べにいったり
できる余裕ができると、ちょっと、お酒も
呑んでみたくなるのでしょう。
実家に帰ると、一緒にいっぱいやっています。
せりなずなさんとも、そのうち、行きましょうぞ!

投稿: ぷりん | 2009年8月 6日 (木) 07時32分

eyeアルキメデスさま
私も勝どき橋からの眺めには、感動しました。
また、開閉しないかあなぁ。
こんど、お散歩のあと、「はしば」に
お寄りくださいな。
うば桜でよろしかったら、お供いたしますよんsmile

投稿: ぷりん | 2009年8月 6日 (木) 07時36分

ステキなお店ですね。
私の住んでいる所は田舎なので、そんなお店がないんです。
(田舎といっても、元英国貴族のおばさまが住むような粋な田舎ではなくて、ホントにさみしい田舎です・・・。)

下戸なのでお酒は飲みませんが、おいしいお料理をゆっくりつまんでみたいものです。

飲んだ後の情景も、ステキですね。溜め息が出ちゃいました。
片道1時間半先の街でいいから、どこかお店を探して行きたくなります。

投稿: Sey | 2009年8月 6日 (木) 22時26分

ぷりんさん 私を 「はしば」に 連れてって~~ wine
下戸でも酔える晶子


投稿: 晶子 | 2009年8月 7日 (金) 00時06分

piscesSeyさま
緑ゆたかな静かなところに
お住まいなのですね。
わたる風も、さわやかに
小鳥のさえずり、にぎやかに。。
そんななかで、めだかちゃんたちが、
つ~いついと水草つかって、かくれんぼに
おにごっこ。
。。。などと、想像しました。confident

投稿: ぷりん | 2009年8月 7日 (金) 06時48分

tulip晶子さま
まぁ、お忙しいところ、ありがとう。
「未来への伝言」の公演が、無事終わったら、
ちょっと、どこかで、一息いれにいきましょうね。
すばらしいものなるでしょうと、
期待いっぱいですcrown

投稿: ぷりん | 2009年8月 7日 (金) 06時52分

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