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2009年8月13日 (木)

被爆ピアノ「未来への伝言」を観る

8月9日。1945年のこの日、長崎に原爆が投下された。
そして、2009年のこの日、表参道の東京ウィメンズホールにて
被爆ピアノ「未来への伝言」を観る。

舞台の中央にすえられた一台のピアノ。
このピアノは、8月6日に広島におとされた原爆の爆心地から
1.8キロの地点であったにもかかわらず、奇跡的にのこったピアノだそうだ。
当時はガラスの破片が 無数にささって さんさんたるありさまだったというが
今はその傷跡はのこるものの、調律の矢川氏によって、
象牙の鍵盤は、声をとりもどしたという。
そのピアノをかこんで今日は、平和を願う公演。

「原爆がおちて 昼は夜になり、人は おばけになる」
暗転した舞台から 飯島氏の声が聞こえて、幕があがる。
絶望的なピアノの音。弾くのは谷川氏。
「これは、誰のせい?」「誰に罰を与えよう?」口々に叫ぶのは
クラーク記念国際高校の生徒さんたち
その叫びを煽るような三味線の音。
人間国宝 杵屋巳太郎のばちは激しい。
原爆を裁くため おおたか静流が 原爆の象徴「ケロイド」を
素材とした歌を唄いあげる。

わたしは、胸が熱くなってしまった。
わたしは戦争も体験していないし、原爆にも被災していないけれども、
終戦を小学4年でむかえた母に、疎開していた母の妹と
やりとりした手紙をみせてもらったことがある。
「お国のために戦っている兵隊さんのことを思って
お互いさびしいのはがまんしましょうね」とあった。
東京大空襲のあと、防空壕から頭をのぞかせてみた東京は
おそろしく見晴らしがよかった。。とも言っていた。

舞台は後半。飯島氏が絵本「ミサコの被爆ピアノ」を朗読。
ピアノと一緒に生き抜いたミサコという被爆者のことを知る。
「わたしはこのピアノをどうしても捨てられません」
飯島氏が読むと、谷川氏のピアノが答える。
「そうよ。わたしもあなたも生きているのよ」

その時代をまったく知らないクラークの生徒さんたちが
全員で「ずっと、忘れない。ずっと がんばるよ」を唄いだした。
そのあと、おおたか氏が 会場を合唱へといざなう。
曲目は「天空の歌」
巳太郎先生はお三味線をまるでギターのようにかき鳴らす。
ラスト、「ふるさと」を出演者も観客もみんなで合唱。
「♪わすれが~たき ふるさと~ わすれが~たき ふるさと~」
Photo
すばらしく充実していた公演。
でもそれは出演されたメンバーが豪華であったからだけではない。
そこに若い人たちが一緒に交われたことではないか?
夏休み返上でがんばったのだと思う。
歌もセリフも、りっぱなプロたちを圧倒して上手だった。
彼らは、、これをきっかけに戦争に流されてしまった愚かな大人たちに
ついて考えてくれるだろう。
「おだやかって何だろう?」「自由に生きるにはどうしたらいいのだろう?」
あやまちを礎にして、これからを築いてほしいと思う。

とはいえ、それはわたしの年代ですら、今や実感として
むずかしいのだけれども。。。
わたしが描いた「平和絵本」を母に見せたとき、
まず一声がこうであった。
「こんなもんじゃなかった。。。」
Photo_2

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4日々徒然」カテゴリの記事

コメント

僕のおじいさんの弟の手紙を持っている。兵隊へ行く前に書いた妻と祖父、兄弟、甥っ子などに書いた2通の手紙。遺書として読んでくれと書いてある。その人と奥さんとは夫婦生活5年だった。その人はどこの部隊でどこで死んだかは分からない、僕が時間をかけて厚労省なとで調べるつもりだ。手紙の最後に朱肉で拇印を押してある、60年以上たった今でも赤々とその伯父の指紋が残っている。血みたいだ。戦争はちょっと前までそこにあった、ただ僕らが身近にあるのを見落としていたからだ、言わない大人も良くない。博物館ではリアリズムに欠ける。

投稿: ガマ蔵 | 2009年8月14日 (金) 22時58分

ご無沙汰しております。
お母様の「こんなものじゃなかった、、」の一言が心に響きます、、
戦争の話は、一緒に暮らしていた祖母から時々聞かされていました。というよりあまり語りたがらない祖母から何気なく聞き出していた、のかもしれません、、。裕福な家庭で育った祖母は、夫をフィリピンで亡くし、その後娘を破傷風で亡くし、、壮絶な人生だったと思います。
私の想像の戦争というものは、お母様がおっしゃる様に「こんなもの」ではないと思いますが、子育てをすることや年を重ねることで、悲惨さ、残酷さを身にしみるようになりました。
祖母や両親から聞いた戦争の話は風化させないように、子どもにも伝えていこうと思っています。
一昨年に「夕凪の街、桜の国」という映画を観ましたが、えぐいシーンは絵画で表現され、生生しさはなかったものの、終戦から60年以上も経った今もなお子孫に渡り苦悩が続いていることを知りこれもまた子どもや多くの若者に伝えていきたい、いかねば、と感じた作品でした。

投稿: | 2009年8月15日 (土) 12時44分

moneybagガマ蔵さま
うちの祖父は、赤紙がきそうな直前で、
終戦をむかえられたらしいです。
大空襲でも家が残ったし。。。
その点は、ほんと、運がよかったみたい。
でも、農家に買出しにいったり、疎開をしたり。。
の一般的な苦労はあったようです。
親族のなかで、戦争体験者がいるのは
われわれがぎりぎりの世代かしら?
やっぱり、身内の話がいちばん堪えますね。think

ぜひ、大おじさんのことを調べたら、お話きかせて
ください。

投稿: ぷりん | 2009年8月15日 (土) 13時27分

chick野良猫にゃにゃみいさま
こちらこそ、ご無沙汰いたしました。
夏休み、お嬢様はどんな楽しい経験を
なさっているのかしら?
コメントありがとうございます。
戦争体験のあるかたの多くは、つらすぎて
なかなか口にできないようです。
それに、自分だけ、生き残ったことを負い目に
感じたり、恨みを次の世代に引き継いでほしくない
という気持ちもあるようです。weep
おばあさまも、きっとそんな思いだったのでしょう。
でも、われわれとしては、やっぱりきちんと
聞いて、次の世代に語りついでいきたいですよね。
ほんと、おっしゃるとおり、年をかさねると、
悲惨さが、少しわかってきました。
戦争の話はまだ、小さなこどもには、
むずかしいかも知れないけど、少しずつでも
伝えてゆけたらいいですね。
子育て、がんばってください。heart02

投稿: ぷりん | 2009年8月15日 (土) 13時44分

すみません、、無記名で、、二番目の投稿はnako
でございます。失礼いたしました。

投稿: nakochan | 2009年8月15日 (土) 21時26分

ぷりんさん ご来場くださってありがとうございます。こうして考える時間を持つことが 平和の象徴なのかもしれませんね、
どうやって次の世代に伝えていくべきか・・・
というより、世代を超えて一緒に本気になる時間を持つことの大切さそして喜びを非常に感じました!

投稿: 晶子 | 2009年8月16日 (日) 02時08分

祖父が戦死いていますので、父がよく語ってくれたのは、戦地へ赴く汽車の後を、線路の上を走って追いかけたことです。
私は、物心付いたときから、戦争には敏感に反応するそうです。花火の音にも異常に怖がったそうで…
私は密かに、自分は祖父の生まれ変わりだと思っています。
 
次の世代に伝えていく大切な義務があること、
忘れてはいけないですね。

投稿: せりなずな | 2009年8月16日 (日) 10時35分

virgonakoさま
あら、まぁ、こちらこそ大変失礼いたしました。
ほんと、、ごめんなさいね。
とほほ。。。恥ずかしいです。wobbly
コメントありがとうございます。
ぼくとダンナさまとよい夏休もを
すごされたことでしょうね。

投稿: ぷりん | 2009年8月16日 (日) 14時54分

tulip晶子さま
一年一年と充実されていく「被爆ピアノ」公演。
頭がさがるばかりです。
ああいったことは続けていくことこそ、
大事ですよね。
これからも、ぜひ、がんばってくださいませ。shine

投稿: ぷりん | 2009年8月16日 (日) 14時58分

cloverせりなずなさま
わたしも一泊だけ実家に帰ってきました。
母から、戦争中の学童疎開の写真
などみせられました。みんなおかっぱ頭の
女の子。。。お寺にいます。weep

そのうち、せりなずなさんの
おじいさんと、お父さんのお話も
読んでみたいですpen

投稿: ぷりん | 2009年8月16日 (日) 15時04分

素敵な公演ですね。
ぷりん先生、情報網がすごいのですね。

ガラスが刺さったままのピアノは、悲しげで寂しい音を奏でるのでしょうが、修復後ということですので、快い優しい音に変わるのですね。

投稿: aoba | 2009年8月23日 (日) 08時48分

snailaobaさま
情報網というか、おつきあいが広いのは
晶子さんです。
こうした、公演を続けるということは、
草の根運動。大変なことですconfident
ピアノの音は、きらきら。。ときに、絶望。。
弾き方でいろいろ変わるので、楽しめました。shine

投稿: ぷりん | 2009年8月23日 (日) 18時36分

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