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2009年7月24日 (金)

岩手の昔話「たろうの笛の音」おわりに

このお話は「日本の民話」(未来社)の「笛吹き兼吉」をもとに
再話しました。「伝説」にならないかしら?と、調べてみましたが、
「ゆかりの地」などが、のこっていないようでしたので、
「昔話」といたしました。
Taro15
「かめの恩返し」というと、おじいさんになってしまう
「浦島太郎」が有名ですね。
こちらのお話では、病気はなおしてもらったけれど、
人間界にはもどれなくなってしまいました。
「良いこと」をしたのに、かならずしも幸せにはなれない、
といったパターンの背景を考えると、私は
昔の人の謙虚な心が見えてくるように思うのです。

くらしが今よりずっと貧しかった時代、
人と人はもっと寄り添って、助け合っていなければ
生きていくのとはできなかったでしょう。
昔話に「困った何か」や「かわいそうな何か」を助けるお話が
多いのもそんなわけでは?と考えます。

その一方、竜宮などの「異界の世界」については
西方浄土とかさねて、華やかで豊かなところとして
あこがれていたことでしょう。
そんな世界のふしぎな力を借りて、豊かに、幸せになってみたいと
夢みていたようにも思います。
されど、そのふしぎな力に頼ってしまったら、それだけでは済まない、
何か代償を払わなくてはならないのでは?と
畏れもいだいていたのでしょう。そんな心の揺れが、私には
謙虚に感じられてなりません。

また、笛の名人でもあり、人一倍やさしい心根であったゆえ、
竜宮のむこに選ばれたのではないかと思います。
人よりすぐれた能力や心根をもつものは、人より「重いつとめ」を
背負うさだめにあります。(盲導犬など、まさにそうで泣けます)
たろうは、望んでむこになったわけではないけれど、
竜宮では、そのつとめをりっぱに果たしていることでしょう。
笛の音は、竜宮の生き物たちを 楽しませているのでしょう。

その秀でた息子をもったがために、ひとりになった母を
山のけものたちが守ります。
たろうの笛の調べは、母をなぐさめると同時に
けものたちに 「母を頼む」とお願いしているのかも知れません。


 

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コメント

とっても、考えさせられるお話でしたね。
いつにもまして、ぷりんさんの幻想的な絵が、
より不思議な世界へと私たちをいざなってくださいました。ありがとうございました。
次回も楽しみにしていますが、お忙しいとのこと…
無理をなさらずに…
のんびりと待たせていただきます。

投稿: せりなずな | 2009年7月24日 (金) 13時22分

代償を払う・・・
良い言葉ですね。現代人が忘れている言葉ですよね。

私たちの心のメカニズムに埋め込まれていたはずの大切なバランス。
いつから、失って行ったのでしょう。

とくに環境問題はまさにそれ。
しっぺ返しをされているのにね。
感じることは、いつも心の言葉だと思います。

次回を楽しみにしています。
また、拍子木でよんでくださ〜〜い( ^~^ )/

投稿: アルキメデス | 2009年7月24日 (金) 18時50分

太郎と笛の音のお話、読んでいて何かに近いものを感じてたんですが、今日のブログを読んで「ピン」ときました。

泉鏡花のお話にも、どこか近しいものがあると思いました。
(あちらは、大概母親や姉のような感じの女性が消えて、少年が取り残されることが多いのですが・・・。)

ただ今、ご多忙とのこと。
暑さも続きますので、お体に気をつけて下さいね。

投稿: Sey | 2009年7月24日 (金) 21時19分

すみません、追伸です。
先日のコメント、ありがとうございました。
ぷりんさんにああ言っていただけると照れてしまいます。

ただ、私はぷりんさんが思うような人柄ではないかもしれません。
(私を生んで育てている親は、私の事を「天邪鬼」と思っています。)

そんな私ですが、これからもよろしくお願いします。

投稿: Sey | 2009年7月24日 (金) 21時23分

cloverせりなずなさま
もともと、凝り性のところがある私。
挿絵もだんだんと複雑化。
ちょっと、仕事に支障がでてきたので、
少しのんびりペースで、続けようと思います。
でも、質は落とさないようにがんばるわ。
せりなずなさんのところへは、変わらず、
遊びにゆきますね。

投稿: ぷりん | 2009年7月25日 (土) 06時55分

eyeアルキメデスさま
そうですね。環境問題もまさにそう。
人は傲慢になりすぎていますね。
「得る」ことばかりを求めています。
今はもう十分「身の丈」には、
たりていると思うのですが。。。

投稿: ぷりん | 2009年7月25日 (土) 07時01分

piscesSeyさま
泉鏡花ですか。なるほど、気がつきませんでした。
でも、あんな耽美の世界にちょとでも、
近づけたらすてきでしょうね。とても無理(苦笑)。。
でも、これからもいろいろ描くつもり。です。

Seyさんのブログを読むと、たまにちらりと
お母様の影。。。私は、Seyさんとお母上は、感性で
非常に近い。
そして、お母上はSeyさん以上に細やかな
心もちの方かなぁ。などと、かってに想像を
ふくらましていました。

投稿: ぷりん | 2009年7月25日 (土) 07時12分

ぷりん様

けものたちの画を拝見していたら、なぜか、グリム童話「ブレーメンの音楽隊」の動物たちの話を、ふと思い起こしました(笑)。動物たちの力で、家にしのびこんだ泥棒を追っ払うサクセスストーリーですが、古今東西、民話や神話に、けものたちは立役者として度々登場しますね。

「ひゅ~ ひゃらり ひょ~」。
笛の拍子の表現は、能楽の笛も、能楽師の先生たちは「ひゅー ひゃらりー ひょー」なる口承にて、申し合わせ(リハーサル)の際、表現されます。

日本語のもつ“語感”の美しさに、あらためて気づかされる作品ですね!

投稿: 棗ハン | 2009年7月25日 (土) 16時54分

sagittarius棗はん
たまには「ブレーメン」のようにすっかっとした
お話を書こうかなぁ、と思うものの、なかなか
うまくいきません。次は、「くじら」のお話
を考えています。おっしゃるとおり、
生き物は、人のおろかさを代弁してくれる立役者です。

笛は「ぴ~」ではいけませんよねぇ。運動会に
なってしまいます。「はんなり」しません。
能楽でもそうだったのですね。ほっ。。。coldsweats01
お祭りなら、「ぴっぴき、ひゃらりこ」ぐらいかしら。
日本人の音のかぎわけ方は、すばらしいですよね。

投稿: ぷりん | 2009年7月25日 (土) 17時43分

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