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2009年5月24日 (日)

芙蓉の花を読む人

この方にお会いすると、私はいつも

芙蓉の花を思い出す。あの夏に咲く

ハイビスカスにも似た華やかな花である。

飯島氏は朗読家。

わたしは、「平和絵本」という東京大空襲を

題材にしたお仕事でご一緒した。

朗読会にも何度か足を運んだ。

彼女はアンデルセンなどもお読みになる。

もともと、かわいらしく甘えた声なのである。

されど、わたしが好きなのは、彼女の読む

菊池寛の「藤十郎の恋」である。

藤十郎という上方歌舞伎のトップスターが、「不義密通」の

「密夫(みそかお)」を演ずることになった。

だが、その工夫がつかない。そこで、

人妻に恋を仕掛けようと、思いつくのだが。。。

~それは、恋ではなかった。それは、激しい欲情ではなかった。

そのくだりになると、彼女の声も熱をおびてくる。

藤十郎は「密夫の役」になりきるつもりで、人妻を

ひたすら、ひたすら、くどく。

~のう、お梶どの。この藤十郎の恋を あわれとはおぼさぬか?

二十年来耐え忍んできた恋を あわれとはおぼさぬか?

読み手の声が詰め寄る。藤十郎のごとく。

聞き手はすくんでふるえる。お梶のごとく。

その後、偽りの恋を仕掛けられたと知ったお梶は

己を恥じて、だまって首をくくった。

~藤十郎、芸のためには、一人や二人の女の命は。

藤十郎が 心の中でうめいた時、

読み手の顔が 染まっていた。

芙蓉の花は、朝ぼらけのうちは白く、夕方に向けてピンクに

なる不思議な花で「酔芙蓉」ともいうそうだ。

彼女はどこへゆくのだろう。

酔うように読むことを演じて、

彼女は何になるのだろう。

藤十郎は、罪のない人妻の真心を踏んで

芸をきわめていった。

彼女には、子供はいるが、夫はいない。別れたと聞く。

それは、芸のためだったのか?

真実、命を賭した恋のためだったのか?

いたずらを見つけられた子供のように 彼女が笑った。

芙蓉の花は、枯れても地面に落ちない。

花弁を茶色くしぼませて、

小さな拳のようなタネを たくさんのぞかせる。

Photo_2

飯島晶子さんのホームページとブログです

http://akikoiijima.web.infoseek.co.jp/

http://blogs.yahoo.co.jp/robanomimi_a/

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交流の肖像」カテゴリの記事

コメント

ぷりんさん~~

藤十郎の恋 私一番好きな作品です。
再演を!したいですね。

あっ それには心躍るメクルメク「恋」が必要かしら・・・ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ

またお目にかかるのを楽しみにしております。
素敵な似顔絵、ありがとうございました!

投稿: Akiko | 2009年5月24日 (日) 09時21分

lovely「藤十郎の恋」の朗読は、鬼気迫るものあり、
ほんとうによかったわ。
今でも、とても心に残っています。
また聞きたいなぁ。
再演のときはぜひ、知らせてくださいね。
今度、お目にかかったら、内緒の恋のお話?も
聞かせてくださいな。

投稿: ぷりん | 2009年5月24日 (日) 10時16分

「平和絵本」拝読?拝聴?拝見?(どれだろう)しました。感動しました。
語りもたぶん藤十郎とはぜんぜん違うのでしょうね。(そちらも興味が・・・)
耳にも心にも響きました。
ぷりんさんの絵が生々しさを和らげて、でも真実を伝えて、子どもだけでなく大人にも訴えてくる作品になっていますね。
才能あるすばらしい人たちと、世に残る作品を作ってください。

ブログで紹介しても問題ないですか?
中央区偉いね。

投稿: 猫の手 | 2009年5月24日 (日) 17時09分

fuji「平和絵本」見てくださってありがとう。
あれは、自分でも満足している作品。
ですから、コメント、とても嬉しいです。

晶子さんの朗読、ほんと、とてもすばらしいのよ。
こんど、朗読会、ご一緒いたしましょう。
お誘いするわ。

猫の手さんのブログでも、「平和絵本」を
紹介してくだされば、なおのこと、嬉しいです。

投稿: ぷりん | 2009年5月24日 (日) 17時42分

budはじめまして猫の手さん、私からも「平和絵本」見てくださってありがとうお礼です。
私は最後のところで声を入れるだけですが、構成を練り上げる演出や脚本家、一枚一枚お書きになったぷりんさん、それをまたリアルに動かす技術、効果音などなど、本当にいろいろな人の力があってのことでした。

何の仕事でもそうだと思いますが、できた作品は、手中の珠、こどもみたいなものかなと思っています。
では、また~~

投稿: Akiko | 2009年5月26日 (火) 09時30分

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